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輪島物語 二つの頭 (ふたつのとう)

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『この時間が終わって欲しくない。

だからもう一杯コーヒーを淹れてくれませんか?』

『今日はこの話をするために作業が中止になったとしか思えない』

そんな言葉が嬉しかった

僕と杉野さんとのことについては、別の記事で書いた。

 

震災以降、【黒島復興応援隊】を立ち上げ、集落の為にボランティア活動を続けてきた杉野さん。

 

忘れてはいけないのは、彼自身も、被災者だということだ。

 

夢に燃えて能登半島へ移住し、今夏ゲストハウス開業の為に、安定した仕事を辞め、

DIYで改修工事に勤しんでいた。 ところがその建物は、

地震の被害で、使用不可能になってしまった。

 

・・それでも彼は、夢を諦めていない。

 

 

 

兵庫県姫路市に、この黒島集落を故郷に持ち、【黒島支援隊】という団体を立ち上げ、

これまた震災以降、離れた距離をものともせずに通い続け、

集落の為にボランティア活動を続ける、松澤さんという女性がいる。

(※黒島復興応援隊と黒島支援隊は別団体。

杉野さんの黒島復興応援隊は力仕事、

松澤さんの黒島支援隊は炊き出しなどのきめ細やかな支援、、とは、杉野さんの談。笑)

 

3月下旬に初めてボランティア活動に訪れた僕たちは、たまたま作業予定が空白になってしまった日に、

杉野さんからの紹介で、黒島支援隊の拠点・松澤さんのご実家のお掃除補助へと向かった。

 

その場で、杉野さん、松澤さん、僕たちとで、 一緒にコーヒーを飲んだ。

 

コーヒーを淹れながらの自己紹介では、自分達の負ってしまっている重荷の話も打ち明けた。

 

普段は自分達のことを語ることを嫌がるフミノさんだけれど、

この日は「話すべきだ」と言った。

 

被災の経験は無いけれど、夢にまでみた建物がダメになってしまう経験はあって、

それでも私たちは、がんばって自分達らしく生きようとしているよ、

そのエピソードは、少しでも希望に繋がるのではと考えたのだ。

 

語る自分達も、耳を傾けてくれる人達も、その場にいるみんなで泣いた。

 

まさに、珈琲の魔法の時間だった。

 

その場で、杉野さんが松澤さんに、

『やっぱり自分はゲストハウスをやりたいです。この建物を使わせてくれませんか?』 と言った。

 

松澤さんはすぐに、 『どうぞ、使ってください』 と言った。

 

驚いた。

 

大切な思い出の詰まった、自分の育った家。

それを、他人に使わせるなんて、普通はなかなかできない。

 

奇跡の瞬間に、立ち合わせていただいてしまった。

 

能登半島の現状を見るに、復興はまだまだ遠い。

 

果たして復興は叶うのか?とすら思う。

 

でも、「杉野さんの夢」の復興が、目の前で始まった。

 

 

復興、町おこし、

魅力的なお店や宿が1つできるだけでも、 地域への貢献・町おこしに繋がるんだ、

そう信じて、自分も小さな飲食店をやっている。

 

だから、この杉野さんの夢を僅かでも手伝うことは、

長い目で見た時に、必ずこの集落の為にもなるんだ、そう信じた。

 

自分は、客商売をやっているために、

ボランティア活動が積極的に行われる土日には、駆け付けることができない。

であれば、平日にやって来て、このゲストハウスの改修工事を、僅かばかりでも手伝おう。

 

そう決めた。​​​​​

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買ってきた材料を二階に運ぶのも大変。

5月の炊き出しの時に仲良くなったタカノさん。

​杉野さんと共に黒島復興応援隊を立ち上げた方。

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掃除をすると建物が喜んでいるのがわかる。

​フミノさんはよくそう言いながら掃除をする。

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