Tea room
Shamrock Cottage
高原の森の奥。
静かな時間の流れを愉しむ
あなたのための、
小さな小さな、隠れ家です。
朝の時間 06:30-11:00
午後の時間 13:00-18:00
(※11時~13時はお休みです。)
営業日はWEB予約システムのカレンダーやSNSをご参照ください。
ぼくと杉野さん
古い建物が好きだから、
そして、そこでの暮らしを空想するのが好きだから、
古い建物を手に入れて、そして自分たち自身で、手を入れようと思った。
【森と小川の借り暮らし】と銘打って、ひたすらにDIYを繰り返す日々だった。
はじめてのことばかりだったし、思ったよりも進まないし、思ったよりもはるかに、お金はかかるし、
好きで始めたことだったけれど、しんどいし、不安だった。
そんなある時、偶然に、スマホの画面の中に、同じようにDIYに勤しむ男性の記事を見た。
しかも、自分の大好きな能登、輪島市の黒島集落で、古い建物を直して、ゲストハウス開業を夢見ている。
安定した公務員の職を捨て、自分らしく生きるために、夢を追っている。
赤裸々に悩みや葛藤を綴る姿勢に、僕はすっかり愛読者になった。
自分がお店を始めた時のことも思い出し、勝手に仲間ができた気分だった。
一度も、コンタクトを取ったことはなかったけど。
2023年12月31日のブログも、楽しみに読んだ。
それは、ゲストハウス開業に向けての一年間の努力をまとめたものだった。
売買契約書を交わし、残置物を片付け、一級船舶免許を取得し、毎月イベントを開催し、
ゲストハウスのコンセプトに悩んでは、ホームページ作りをやり直す。(笑)
なんと年末には、バーカウンターに据え付ける欅の1枚板を譲り受け、
元日からも休みなくDIYの予定が詰め込まれていた。
ブログの最後には、一年間の感謝と共に、
【前に進む勇気をいただき、本当にありがとうございます】と読者へのメッセージが記されていた。
いえいえ、あなたの記事を読んで、勇気をいただいているのは、こちらの方ですよ。
2024年の3月には公務員を退職し、6月にはゲストハウスの開業の予定。
これまで、あなたはこんなに頑張ってきたんだ。きっと、全部が報われる一年になるよ!!
夢が全部実現する、そんな一年が、明日から始まるよ!!
そう思い、ブログを閉じた。
そして翌日、
一年の始まりの日に、あの地震が起きた。
ゲストハウスになる予定だった建物は、
杉野さんが数ミリの誤差を気にしながらDIYを続けてきた建物は、
何センチも傾いて、もう、使えなくなってしまった。
夢の絶頂から、真っ逆さまに叩き落された経験が、自分にもある。
憧れのマイホームが、ある日、ただの大きなゴミになった。残ったのは、莫大な借金だけだった。
他人事じゃないぞ。
そう思った。
僕はその当時、他人を憎むことか、自分が死んでしまうことしか考えていなかった。
でも杉野さんは、震災直後から黒島復興応援隊というボランティア組織を立ち上げ、
一日の休みもなく動き続けた。集落の人々の為に。
そして、とある新聞記事で語っていた。
「自分は、色んな人と関わりたくてゲストハウスを志していた。
でもその夢は、こうしてたくさんのボランティアさんと関わることができて、
叶ってしまったのかもしれません」
記事の写真の中で、彼は、笑っていた。
・・ボランティアに行こう。
何一つ役に立てないかもしれないけれど、この人のところに、何か手伝いに行こう。
気が付いたら、初めてのDMを、僕は彼に送っていた。